10
愛のメッセージを織り込む伝統工芸
花織みんさ
花織みんさテープ

「愛の記号」の伝統模様をマスキングテープに

花織みんさは、八重山地域の伝統織物です。特徴的な五つと四つの絣模様は「いつ(五つ)の世(四つ)までも、末永く」という意味で、古来より女性から男性へ送る手作りの帯に編まれてきました。

今回、その模様をみね屋工房とのコラボレーションでマスキングテープにあしらいました。現代版の愛のメッセージとして、さり気なく使ってみませんか。

生産者:有限会社みね屋 × デザイナー:イシガミアキヨシ
販売場所:みね屋工房 伝統手織工芸館
住所:沖縄県石垣市新川1129−2


このお土産のストーリーを読む

num1
241 IMG_2499_00088

織り布に祈りや想いを込めて・・・

沖縄には古来より、女性が近しい人に「ティサージ(手巾)」を織って渡す風習がありました。

愛する人や兄弟、両親などに贈られたティサージ。想いを込めてさまざまな模様を入れて織られたことから、「ウムイ(想い)のティサージ」「ウミナイ(祈りの)ティサージ」と呼ばれています。

沖縄で最も古い織物といわれるティサージ。
八重山地方でも花織のティサージは、旅立つ人にお守りの代わりとして手渡されてきました。想いのこもった布を身につけると、その想いが身につけた人の守りとなってさまざまな災いから身を守ってくれると信じられてきたのです。

名蔵湾を臨む「みね屋工房」は、八重山で失われつつあった「花織」の伝統を新しい形で甦らせた織物工房。

「花織みんさー」と呼ばれるこの織物には、とある素敵なストーリーが隠されていました。


num2
258 IMG_2516_00105

染めから織りまで完全な手技で

花織みんさーは、タテ糸とヨコ糸を精錬(不純物を取り除く染めの準備工程)するところからがスタート。染められた糸は糊付けや糸繰りなど多くの工程を経て、1本1本織り機に通して織り上げられていきます。

花織りは、2色のタテ糸を畝(うね)織りという少し厚みを出して織る方法で、その糸をすくい上げながら織っていきます。タテ糸は表に、ヨコ糸は裏面に浮き上がり、両面で違った風合いの織りを表現できるのが特徴です。

それぞれの工程は、熟練した技術と根気の強いられる手仕事で。そうして完成した織物は、手織りならではの温かみが感じられます。

243 IMG_2501_00090

伝統の織り布を生活の中に

工房創設者の高嶺幸子さんは白保村出身。古謡の「ユンタ」や「ジラバ」を多く歌いこなし、村人への継承に情熱をかたむけた父を持ち、島の歴史や民俗に大変造詣が深い方です。

30才の頃、石垣市後継者育成事業の織物講座を受け、八重山上布の技術を習得します。幼い頃から祖母の機織りを見ながら育った高嶺さん。自然と技術が身に付いていたのか、初めての作業だったにも関わらず、早く織れたといいます。

講習後は友人と反物を織って卸していましたが、その余り布でのれんやタペストリー、ポーチなどを商品化すると、たちまち人気に。

昭和55年には工房を創設。八重山伝統の「花織」と「みんさー織」を組み合わせた「花織みんさー」を創作し、新しい伝統の織りが誕生しました。

その後も県の工芸指導所で花織の技術をマスターし、工房では花織講習会を毎年開催し技術の継承にも力を入れます。

num3
183 IMG_2430_00020

num4
203 IMG_2454_00043
200 IMG_2451_00040

根底にあるのは伝統文化の継承

工房設立から33年。伝統を重んじながら革新的な発想を加えるスタイルに変わりはなく、工房内には時代の流れとともに新しい商品がどんどん生み出されています。

祭りに登場する神々をポップに描いたハンカチや、「石垣ブルー」と名付けられ島のさまざまな青を表現した風景織りなど、島独特の風土を題材にした作品もたくさん。ただ伝統の織りを再現するだけでなく、島の風土をも織りに組み込みます。

「意味を込めて織らないと、伝統の意味がないんですよ」

————織りに対する心は、元来八重山の織り布に込められてきた、さまざまな想いを表現する絣の歴史に忠実だからこそなのかもしれません。


num5
230 IMG_2486_00075

「花織みんさー」に込められた幾重の想い

八重山のみんさー織は、通い婚の時代に女性から男性へ贈られた帯がはじまり。その織りには、ロマンチックな深意が背景にありました。

交互に配された五つと四つの絣模様には、「いつ(五つ)の世(四つ)までも末永く・・・」という想いが込められています。絣の両側には二本線のタテスジ(縞)が伸び、「まっすぐに末永く愛が育まれていきますように・・・」との願い。帯の両側にはムカデの足に似た模様が施され、「足繁く私のもとへおいでください」といった思いが表現されています。また、藍一色で何度も色を重ねて染めあげていたことから、「愛(藍)を重ねて」という意味も含有されているといいます。

こうして幾重にも想いをしたためられた「恋文」、みんさー織。
愛する男性へ、永遠の愛の証として届けられました。

さらに、花織で描かれる八つ(矢)と九つ(心)の絣模様には「(矢のように放たれて戻ることなく)心をおさめなさい」という意味があるといわれ、嫁入り道具の一つとして母親から娘に贈られました。


「伴侶と幸せな一生を添い遂げてほしい」という母親の願いが、一枚の布に織り込まれています。花嫁はこの模様が入ったウツパイ(風呂敷)をベールにして嫁いだそうです。

一枚の布にこめられた幾重の想い。
タテ糸とヨコ糸が織りなすこの想い布は、愛しい人を思う研ぎ澄まされた時間の中で、ひたむきな情愛を込めてし織られてきたのです。

DSC_4132

num6
270 IMG_2529_00118

命の時間を割いてしたためる大切な想い

織物を織り上げるというのは、時間も労力も必要な大変な作業。

「織物に向き合っている時間はとても長く、何日もかけてようやく1つ織り上がるもの。その人の生きている命の時間を割いているわけですから、その人のエネルギーや命がこもっているんですよね」

高嶺さん自身、ご両親に織物を贈ったことがあるといいます。
「私は兄弟が8人いるので、両親2人がいて、横に縞(しま)を8スジ作った着物を作りました。育ててくれた感謝の気持ちを込めてそれを織り、プレゼントしました」

古より織る人のウムイ(想い)を込めて贈られてきた島の織り布は、絆の証。
そこには、絆の数だけたくさんのストーリーや大切な想いが詰まっているのです。