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イシイチ〜石垣島をぐるり一周する自転車の旅

  • 石垣の海
  • 石垣の畑
  • 石垣の山
  • 自転車の旅の醍醐味。それは、土地の匂いや音など常に五感で感じられること。移動中、目に止まった場所にふらっと立ち寄ったり、他のサイクリストと交流したりと、さまざまな出会いや発見があるのも、自転車の旅ならではの楽しさではないでしょうか。
    青い海、連なる山、温かい人々……石垣島の魅力を存分に味わうなら、自転車がベスト!
    そんなコンセプトから、石垣島をぐるり一周する自転車の旅、通称“イシイチ”のプランが生まれました。

    この旅の旅デザイナー:山田 裕司

    1985年鎌倉市生まれ。WEBデザインを専攻するも”生の質感”への疑念から独学でペインティングを開始。物語性のあるスポーツの一場面を主題として独自の世界観を提示。自身もロードバイク乗りであることから、現在は自転車をモチーフにした制作を行う。

    島の魅力を再発見する旅のプラン

    DAY 01:
    石垣空港 着 ー市街の宿泊先にむけて島の東〜南部をライド
    DAY 02:
    島西部をライド(川平湾〜川平石崎〜御神崎)
    DAY 03:
    島のチームに同行し、石垣島トライアスロンのコースをライド〜島の内陸をライド
    DAY 04:
    島のサイクリストとともに川平湾まで通勤ライド
    DAY 04:
    石垣島1周ライド

    DAY01

    石垣島でのファーストライド

    美しい景色に吸い寄せられるようにペダルを漕ぐ

    午後3時。石垣空港に降り立った瞬間に「あったかい!」と感じた感動的な気候も、輪行してきた自転車を組み立てているうちに暑く感じてきて早速半袖に着替える。

    組み終えた自転車に乗り空港を出てホテルへ向かう。走り出して1分もたたないうちに眼前に広がる青い海に再び感動しつつ国道390号線を南下。
    10kg近くあるバックパックを背負っているため「早くホテルにチェックインしたい!」という思考は、いつの間にか潮風とともに軽く掻き消され、その匂いに吸い寄せられるように気付けばハンドルは砂浜の方向へ。今まで見たこともないようなかたちや色の貝殻や珊瑚は、ここが石垣島だということを認識させるには十分だった。

    その景色を満喫しハンドルの向きをホテルへ戻すことに。
    走りながらひとつ気づいたことは、風景の変化とともに、空気の匂いも変化するということ。
    たった10kmほどしか走っていないにも関わらず海岸線から市街地へ向かう中で刻々と変化する匂い。
    嗅覚と風景の変化を同時に楽しめるのは自転車ならではの大きな魅力だということを気づかされた。
    写真や映像で見る風景は確かに美しい。しかしどんなに高解像度になろうとそこに漂う匂いは無臭である。
    記憶に残る風景というのは目だけでなく鼻や耳といった五感をフルに駆使することで初めて長期記憶として脳に刻まれることになるのだろう。

    島の美味しさを体験!

    午後6時頃に市街地にあるホテルにチェックイン。自転車をそのままエレベーターに乗せ5階にある部屋へ向かう。宿泊した5階の部屋の窓からは石垣港が広がりその向こうに沈む夕日を望むことができた。

    他のデザイナーらが集まる飲み会に誘われ、近くの『瑚南』という居酒屋へ行くことに。プロジェクト関係者の方や台湾から来ているデザイナーらと名刺交換。
    ジーマミー豆腐やシイラのマヨチーズ焼きなど初めて食べるものが多くどれも美味い。また天然のもずくが島の特産品だということを初めて知る。泡盛も思っていたほどクセがなく飲みやすい。
    中でも美味しかったのは石垣牛の握り。食感はまるでマグロみたいで肉を食べているという感じが全くしない斬新な感覚だった。

    【このルートを走りました】南ぬ島石垣空港〜石垣市街

    DAY02

    島らしい風景の数々をゆったりと堪能

    まずはUSIOチームの案内でスタート

    2日目はUSIO石垣チームの翁長さんの案内で島の西側をライドすることに。ロードバイクは2年半ぶりに乗るそうで、今まで外に放置しっぱなしだったとか…。
    タイヤがスローパンクしていたため近くの『石垣自転車商会』で直してもらい、出発。

    市街地を抜け県道208号を北上。勾配3,4%ほどの坂を登っていくと、工場の煙突からモクモクと立ち上る煙が目に飛び込んできた。どうやら製糖工場のようで、そばを通ると今まで嗅いだことのないサトウキビの独特の匂いが鼻を通る。刈り取られたサトウキビを大量に積んだトラックが近くを走る。生まれて初めて見る光景だ。

    自然に囲まれた坂道を気持ちよく下り海岸線に出てしばらく走り名蔵の海岸沿いのベンチでひと休み。砂浜では夫婦らしき人がもずくやカニを捕っている姿が。この日は雲が空を覆っているがそれでも海の色は都会のものと比べてはるかに透明感があり輝いている。

    そこからさらに海岸線を北上し細かなアップダウンをこなし川平湾を望むことができる川平ビーチに到着。曇り空ながらも白く輝く砂浜はまさに石垣島を象徴するような絶景が広がる。

    その後、車で移動していたプロジェクトスタッフの方と合流し3人で近くの食堂で八重山そばを食べる。
    お腹を満たしたところで、カブトムシの角のように出っ張った部分の川平石崎まで走ることに。
    10分ほどペダルをこぐと道の両脇に丁寧に剪定された原色に近い緑色の芝生が目に入る。近くのリゾートホテルが管理しているそうだが、美しい木々と芝生が広がっている。
    近くで見ても山肌が見えないくらい青々とした木々で覆われた山はまるでスーラの点描画のよう。
    そんな風景を堪能したところで川平石崎を折り返す。79号線を南下した途中で翁長さんとは別れて別行動。ここからは一人旅に。

    のんびりとペダルを踏むひとり旅。

    僕はまたひとつ突き出ている島の部分をぐるっと周ることに。

    79号線を南下した先の丁字路を右へ。元々少ない車はさらに見かけなくなる。所々に小さな牧草地帯がいくつかあり、どこかしら牛も島の人のようにのんびりとしている。脚を徐々にけずってくるようないやらしいアップダウンが続く。石垣島は実は平坦な道がほとんどない丘陵地帯だということを思い知らされる。

    時折立ち止まって写真を撮りつつ走り続けると、この先御神崎という看板が。脇道に入り勾配10%近くある坂を登ると、石垣島の最西端にある灯台である御神崎灯台が見えてくる。迫力のある岸壁と凛とした灯台と静かな海のギャップが生むコントラストが美しい。ここではサンセットを望むことができるメジャースポットだそうだが、日が暮れる前にサドルにまたがり、きた道を引き返し宿を目指す。

    【このルートを走りました】市街〜島西部

    DAY03

    地元チームとの合流 & 交流

    自転車旅のための情報収集にいそしむ

    この日は石垣島の『Wind Friends』というチームの人たちのライドにジョイン。
    本来この日に島一周する予定だったが、石垣島トライアスロンが間近に控えており、そのバイクレースコースをトレースするトレーニングライドという感じで走ることに。海岸線を走り昨日走ったばかりの御神崎をぐるっと周り市街地に戻ってくる。
    かなりガチのスピードで走っていたためなかなか込み入った話はできなかった。
    ただ、気になっていた石垣島のインフラに関して話を聞いてみたところ、割とどこでもロードで走れるほど道は整備されているとか。

    確かにいろんな道を今日走ってみたところ道は結構広いうえに陥没しているようなところはなくかなり快適に走れることがわかった。
    てっきり多くのサイクリストが走る海岸線やレースで使うコースだけかと思っていたらそうではなかった。
    ちなみに毎年秋頃に行われるサイクリングイベント、グレートアース石垣島ライドは120km近く走って信号がひとつもないコースなんだとか。これはすごい!
    そして島のサイクリストは割とレース志向だということも分かった。

    【このルートを走りました①】新トライアスロンコース

    【このルートを走りました②】バンナ公園、ダムをめぐる

    DAY04

    生粋の石垣サイクリストと島を巡る

    自転車旅的ロケーションハンティング

    本来昨日(日曜日)に一緒に走る予定であったTakashiさんと彼の職場のある川平まで20kmほど急遽ライドすることに。
    彼は生まれも育ちも石垣島という地元生粋のサイクリスト。

    まず石垣島サイクリングのベストシーズンは4月だとか。次に10月だという。他の季節は猛暑や雨期、梅雨、台風などあり、理由は違えどベストシーズンは東京と一緒だというところが興味深い。
    そして一年中風は割と強く、冬は北風、夏は南風に悩まされるとか。
    また石垣島の天気予報は当たらないらしい(笑)。海岸沿いで晴れていても山沿いに行くと雨が降っていたりする。
    カンムリワシが電柱や電線に止まり出すとこれから雨が降りはじめる知らせになるとか。
    石垣島のサイクリストは若い人はあまりいないらしい。
    ロードバイクを中心に扱うプロショップがないためパーツなどはネットか那覇市の大きなショップで調達するそう。
    島のサイクリストは基本海岸線沿いを走るらしい。なので坂が好きな人はほとんどいないとか……

    というのも本格的な山を登らなくても島全体が丘陵地帯なためずっとアップダウンが続くので、言ってもロードで行ける200m~300m程度の山までわざわざ 走りにいかないらしい。
    確かに今日島一周してみたところ本当に平坦な道というのがほとんどなく、常にゆるく登っているか下っているかといった感じ。これは地図で見ただけでは分からない発見だった。
    本土では仲間とロングライドするときには必ず途中でカフェや食事所に入って談笑したりする文化みたいなものがあるのだけど、石垣島はお店は少なく限られたところにしかないためそういうことはしないらしい。サイクリスト向けのお店というのもなく、観光客も利用する食事所を地元の人も利用するのだとか。
    西の海岸線の絶景スポットは79号線から見る川平湾。白い砂浜と真珠養殖場が見えて変化に富んだ風景が楽しめる。

    DAY05

    いよいよ石垣島一周=“イシイチ”本番へ

    5日間の旅から生まれたオリジナルルートを走る

    朝10時。島で一番賑わう市街地にも関わらず平日の朝はとても静か。
    市役所の前を通りそのまま海岸線を北上。
    道路沿いにはそこら中にヤシの木が生えており南国感が漂う。
    観音崎を抜け79号線に合流する。
    道を飲み込んでしまうような勢いよく育つ木々や草花に自然の力の強さと凄まじさを感じる。

    左手に広がる名蔵湾を見ながらずっと続く海岸線を走る。
    ミジュン崎を通過しその先のY字路を右へ。
    県道にも関わらず本土のそれとは比べ物にならないほど車が少なく、排気ガスという単語はこの島には存在しない。
    川平湾の白い砂浜を見ながら東へと進む。
    細かなアップダウンが続く道を走り米原の集落を抜ける。
    この辺りの砂浜も純度が高く、立ち止まりカメラのシャッターを切る頻度が高くなる。

    海岸線はまたうねるように向きを変え北上する。
    一年中吹く島特有の強い風に少し煽られながらペダルを回す。
    徐々に集落と集落の間隔が広くなっていく。
    ごくまれに一瞬、風の音も鳥の泣き声も聞こえなくなり、タイヤと地面との摩擦音しか聞こえなくなる時が訪れる。この世には自分しか存在しないのではないかと思えるほど静謐な空間の中を走る。

    ひたすら海岸線を走り、右手には野底岳や大浦山が見える。島の山の形は本当に独特で、まるで広重の東海道五十三次に出てくるような山の形をしている。

    大浦山沿いを通過した先の丁字路を左に行く。ここから先はお店もあまりなく電波も入りにくくなるためサバイバル色は強くなる。
    少し登っては下り、また少し登っては下りの繰り返し。ど平坦な道が意外と少ないということが実際走ってみて分かる。車ではこういった細かい地形の変化には気づけない。島の地形を体感することができる。

    そこには自転車乗りのユートピアが。

    弱まることのない風と戦いつつ、ようやく石垣島最北端の地、平久保崎にたどり着く。あいにくの曇り空ではあるものの、雄大な青い海と緑のじゅうたんが見事に調和する光景は他の何ものにも代えがたい絶景である。
    素晴らしい景色を網膜に刻み、走ってきた雄大な一本道を引き返す。

    国道390号に合流し後はひたすら南下する。
    空港をすぎると一気に市街地への道のりが近くなったような感覚になる。
    スタートしたホテル前まで来て一周達成!

    走った距離は110km。途中写真を撮ったり休憩したりしつつでかかった時間は7時間。
    これほど自然を常に身近に感じながら走り続くことができる道はそうそうない上に市街地を抜けるとずっと信号が無く無駄なストップを強いられることなく本当に気持ち良く走ることができる。

    サイクリストにとってのユートピアのような場所が石垣島にはあったのだ。

    【このルートを走りました】石垣島一周 102.7km

    山田さんが見つけた石垣島

    いちばん美味しかったものは何ですか?

    八重山そばです!

    いちばんの絶景ポイントはどこですか?

    バンナ公園展望台です。
    公園内は自転車で入れる上に人もほとんどいなくて気持ちいい。

    お土産、何かいました?

    紅いもジャム、グァバジャム、天然もずくです。
    ジャムはどちらも初めて知る味。どんな味かと聞かれても当てはまる言葉がないけれど、とっても美味しい。