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アポなしで石垣島に生きる名人の付き人になる旅

  • 出会う
  • 受け継ぐ知恵
  • 深く潜る
  • ガイドブックでは見つけられない島の魅力を発見する方法のひとつに、「そこに生きる人と出会い、親しくなる」というアプローチがある。たとえば、海岸で何か採っている人に話しかけてみると、思いもよらない体験ができる…というのも大きな魅力。
    そんな視点に立ち、今回は石垣島でしか出会えない「名人」を探し出し、その付き人となって「名人の生き方」を体験する旅に行ってきた。

    この旅の旅デザイナー:石川 翔

    大学生時代に沖縄県伊是名島にて、長期住み込みの映画撮影インターンを経験。以降、沖縄の自然・文化・人々の虜になる。今回のプロジェクトでは、島の人々とコミュニケーションを大事にした新しい旅づくりに挑戦したいと、プランづくりに取り組んだ。

    島の魅力を再発見する旅のプラン

    DAY 01:
    石垣空港着 ー阿香園(弟子入り志願)ー珈琲名人:武田珈琲&友利さん(弟子入り志願)
    DAY 02:
    阿香園(琉球地鶏の飼育お手伝い)ー パイン農園 平さんと出会う
    DAY 03:
    石垣島天文台 ー 小学校で飼育名人や秘密基地で遊ぶ子供たちと出会う
    DAY 04:
    漁港のセリを見学 ー 大島さんの農作業お手伝い ー もずく・アーサ採り名人に弟子入り
    DAY 05:
    川平湾近くのB&Bで養鶏のお手伝い ー 十六日祭体験 ー 石垣空港 発

    DAY01

    コーヒーのプロに、いきなり弟子入り

    コーヒー栽培の研究家にご挨拶

    空港に到着し、レンタカーを借りて、今回の旅がスタート。一番最初に訪ねたのは、石垣島でコーヒー栽培を研究する『武田珈琲』の武田さん。武田さんの畑は海が遠くに見下ろせる山の中腹にあり、大変景観の良い場所にある。
    武田さんはもともと実家が農家で、大学を卒業してから農業生産法人に勤めていた。その会社で働いていた頃、地元のおばちゃんたちと一緒に延々と作業をしていて、休憩がてらコーヒーを淹れたところ評判となり、それがきっかけでコーヒーにハマっていった。以後会社で働きながらも、日本各地の有名カフェを飲み歩くようになり、店のオーナーから話を聞いたりしながら、徐々にのめり込んでいったという。

    コーヒーの淹れ方や豆の選び方を学んでいく中で、「最終的には自分で豆をつくることからはじめないと、最高に美味しいコーヒーはつくれないと考えるようになった」とこのと。ついには会社を辞めて、コーヒーづくりを行うことができる場所を探して辿り着いたのが、ここ沖縄。最大の理由は高温多湿の気候条件だった。
    最初は本土で農業をやろうと考えていたが、紆余曲折あって本土からなくなく撤退。沖縄県内でほかにできそうな場所を探していたら、たまたま石垣でコーヒーをつくっている人がいると聞いて、石垣を訪れた。当時の所持金は数万円だったそうだ。

    石垣にきて3年が経ち、ようやく少量のコーヒーがつくれるようになった。武田さんの畑は目下開墾中で、まだまだ改善の余地があるらしい。だけど、畑に立って今後の話をしてくれる武田さんは非常に楽しそうで、目がキラキラと輝いていた。将来的には台湾や東南アジアでも生産できる環境をつくりたいという。大きなリスクを負いながらも進む姿が、正直とても羨ましいと感じた。

    師匠のいる、コーヒー農園へ向かう

    その後、武田さんと共に師匠のような存在であるという友利さんのコーヒー農園へ。道路を外れて山道を登って行った先に現れたのは、海と山が一望できるテラスがついた農園カフェだ。
    友利さんは退職後に今の場所を購入し、コーヒー農園を始めた。最初は民宿をやろうと考えていたらしい。余った土地でマンゴーを栽培しようかと思っていたところ、タイミングよく知り合いが「石垣空港の近くで行っていたコーヒー栽培をやめるから、木を引き取らないか」という話がきて、コーヒー農園をはじめたという。

    農園をはじめた当初は更地で、台風の被害が大きく苦労を重ねたらしい。その後は防風林を植え、徐々に農園の礎を築いていき、現在では安定的にコーヒーが採れるようになった。今ではお客さんがたくさんきてしまうと供給が追いつかなくなってしまうため、あえて店の看板は出していないのだという。ここは、それほど人気を集めるカフェなのだ。

    園内ではコーヒーの収穫から乾燥させる過程の見学、焙煎までの体験もすることができる。コーヒーの実を初めて見た僕にとっては、とても魅力のあるスポットだった。
    そして、緑の生い茂る山の上から遠くに見える青く輝く海を前にして、友利さんとコーヒーを飲んだ。そんな友利さんの目はとても優しく、穏やかな人柄が感じ取れた。

    強いまなざしを持つ人たち

    旅初日で一番印象に残っているのが、出会った方々の「目」だ。力強かったり、穏やかだったりと様々な印象を放っていたけれど、共通して皆、キラリと輝いていた。
    島の自然の中で、自らがしたいことを精一杯しているから、こんなに綺麗な目になるんだろう。僕はいったい、どんな目をしているんだろう。滞在中は、皆さんの「目」に注目するのもありかもしれないと思いながら、初日を終えた。

    DAY02

    出会いを通じて、『食』と向き合う

    琉球地鶏の飼育体験.

    2日目は朝早くから阿香園の山田さんと合流し、山田さんが商標を取得し、育てている琉球地鶏の餌やりに同行。小屋は市街から離れた畑地帯にある。牛舎を改築しつくったという鶏小屋では、黒い体と金色の首、立派なトサカを持つ鶏が走り回っていた。

    山田さんの育てる琉球地鶏は、元々琉球にいた鶏の特徴を持つ個体を島々で探し回り、それらを掛け合わせることで、本来の形に近づけていって生まれたもの。素人からこの事業をはじめた山田さんは、ここにいたるまでにどれほど努力したのだろうか。
    鶏の配合は、それぞれの個体が持って生まれた特徴をよくよく観察して掛け合わせなければいけない。しかも、鶏にも近親相姦があり、不用意に交尾させることはできない。上手く琉球の鶏本来の特徴を持たせつつ、商品とするためにも体が大きいという特徴をもつ鶏を掛け合わせているのだという。

    山田さんは常に、石垣の土地が持つ特徴を活かすことのできる事業で且つ誰もやっていないものを探し、挑戦と失敗を繰り返しながらも勉強を重ね、仕事をつくってきたそう。
    「誰もやっていないものをやりたいんだ」と山田さんは熱く語ってくれた。その土地でしかできないことを探し、自ら勉強し挑戦をし続ける山田さんを心からかっこいいと感じた。まさに、『挑戦の名人』だ。

    今日はこの後モズク採りの予定だったが雨で延期。 時間が空いてしまったので島内散策へと繰り出すことにした。相変わらずの雨だけど、時々晴れ間が差し込むように。海の向こうで雲の切れ間から光が差し込んでいる景色はとても幻想的だった。

    道中での出会いから、弟子入り。

    散策中に偶然出会ったのが、パイン農家の平良(たいら)さんご夫婦。平良さんの畑では7種類ものパインを育てており、1万本以上の収穫量がある。同時刻に偶然にも本土から食品小売りのバイヤーの視察団体が来ていた。スーツで畑を歩く姿が、マッチしていなくて少し可笑しい。

    僕は奥さんに、時折雨がサッと降るような天気の中、快く畑を案内していただいた。平さんのご主人が大変凝り性らしく、パイン一本一本を手で植えているらしい。雑草もすべて手作業。傷つきやすく、機械化が難しいとはいえ、大変な手間だろう。
    間もなく収穫期を迎えるピーチパインをその場で剥き、食べさせていただいた。その果実の甘さとみずみずしさに感動してしまうほど。ピーチの名がついている通り、桃のような香り、しっかりとした甘味と程よい酸味が美味で、とても貴重な体験となった。急に話かけたのにここまで親切にしていただき、本当に感謝している。

    食べることと、暮らすこと。

    今日は名人とのやりとりを通して、「食」について考えた1日だった。
    東京にいれば世界中のものを食べることができるけど、その土地の食べ物や飲み物を一番美味しく食べるには、やはりその土地に行かなくてはいけないのだと教えてもらった。さらに言えば、その食べ物がどんな風につくられているのかを見なきゃいけない。食べることはもちろん、知ることでも食に対する理解が深まる。これこそ旅の醍醐味なのかもしれない。

    DAY03

    予期せぬ出会いに、身をまかせて。

    雨のため、急きょ予定が変更に。

    3日目も生憎の雨模様。気温も低くて、どんよりした雰囲気が漂う。
    今日は武田さんと一緒に友利コーヒー農園の焙煎体験をすることになっていたが、天候のために中止に。友利さんの店は完全なテラス席になっていて、雨だと何もできないのだ。ヤギが食べて踊りだしたというコーヒーの実を食べてみたいので、また次に来たとき再挑戦しようと決意。

    石垣島天文台にて、新たな魅力と出会う。

    予定がなくなってしまったので、石垣島天文台を訪問。石垣島天文台では館内見学のほか、『4D2U』という膨大な観測データから作成した4次元デジタル宇宙映像を見ることができる。
    石垣で星空を見る魅力は、なんといっても内地では見ることのできない南十字星が見えること。晴れた日には、市街地のホテルからでもその姿を見ることができるらしい。僕が滞在中は雨ばかりなので、見ることができなそうで残念。

    ひょんな出会いから、地元の小学校へ。

    天文台を出て市街地方面へ。道路沿いの畑で草刈りをしている方を発見し、声をかけると、近くの小学校の用務員さんだった。用務員の玉城さんは、小学校で飼っている動物の飼育を受け持っているらしく、草はウサギの餌にするらしい。刈っていたのは、畑の主人が育てている芋の葉っぱ。畑の主人も、葉がない方が芋を収穫し易くなって助かるようだ。このような需要と供給の成り立ちかたは、とても素敵だと思う。
    その後、飼育小屋を見せてもらうことになり、小学校へ付いて行くことに。先生の許可を貰い、飼育係の女の子二人と一緒に飼育小屋を掃除した。女の子たちは掃除もそこそこに、ウサギを撫でたり鶏をワシっと掴んで飛ばしたり、楽しそうだ。そんな様子を玉城さんはニコニコと見守っていた。

    小学校を出て道路を走っていると、通学路とおぼしき道端に植えられた木で、子供が数人遊んでいる。どうやら秘密基地を作っているらしく、思わず声をかけてしまった。
    木の枝を折ってそれを足場にし、拾ってきた板を木の上に固定して基地のスペースが作られている立派な基地。「通る人にビックリされない?」と聞くと、「ううん、ぜんぜん」と応えてくれた。こんな心がほっこりするシーンに出会えるのも、石垣の魅力なんだろう。

    恵まれた環境で育つ、子どもたちと出会う。

    石垣で子どもたちと話をしたのは今日がはじめてだったのだけど、本当に素晴らしい環境で育っているなと思う。自然がいっぱいの島で、小学校はどれも綺麗で広く、犬猫以外の動物とも日常的に触れられる。釣りをしたり、島バナナを採りに行ったり、自分の力で食べ物を得ることもできる。そんな中、僕は住んでいるだけで「生」の勉強ができる石垣の環境が、とても羨ましく思った。子どもができたら、こういう環境で育てたいものだ。

    DAY04

    海の魅力を、存分に満喫する

    石垣タイムで、セリがスタート。

    朝は毎日、魚のセリをしているという漁港へ。石垣のセリは時間が遅く、9時からはじまるらしい。仲買さんらとの調整をすると、自然とこれくらいの時間になるとのことだ。
    市場の端っこに立っているお父さんに話をきくと、魚の種類についてとても詳しく説明してくれた。例えば、石垣市内で多く食べられているのは、マグロのなかでもトンボマグロとキハダマグロ。見た目はそんなに変わらないのに、キハダの値段はトンボの3倍くらいになるらしい。

    9時になり、セリの様子を見学することに。普段テレビで見るような、スピード勝負でセリが行われるのかと思いきや、テンポはそのまま、笑いながら、穏やかに進んでいるのがまた面白い。

    そして、広大な庭でお手伝い。

    セリを見学した後は、市街から車で20分ほど離れた高台の上に広がる敷地の中で、理想の庭を作る大島さんを訪ねた。
    庭の広さは大きな野球場ほどだ。パインや野菜、島バナナなどの農地と、羊小屋と犬小屋が広がっている。この広さで、庭というスケールにとても驚いた。
    大島さんは元々与那国の生まれで、長い間東京で働いていたが、数年前に石垣に来て介護の職に就いている。この土地は自分がやりたいことをやるために購入したとのことだ。

    ここではヤギの餌やり、島バナナの植え替えをお手伝いした。石垣にきてからたくさんのヤギを見てきたけれど、ここのヤギは特に幸せそうだ。草木がいっぱい生い茂っていて、そこら中を駆けまわっている。ただ、ここにいるヤギはとても賢く、決して敷地からは出ていかないらしい。

    この広い庭は、大島さん一人で開墾している土地なのだ。手入れしているのは一部だけど、ここにいると自然の中で生きていることが実感できて、とても心地がよい。石垣ではずっと海風を感じてきたけれど、ここは高地にあり、山風を感じることができる。海辺のような肌にまとわりつく風ではなく、サラサラとした穏やかな風だ。草や土の匂いが立ち込め、風の音や鶏の声、ヤギが草原を駆ける足音、遠くから聞こえる車の音も心地が良い。

    山から、海へ。海の恵みを収穫する。

    午後は多宇さんと、海へモズクとアーサを採りへ。前日まで雨が降っていたけれど、今日は晴れ間が見えている。多宇さんはアーサ採りやモズク採りが大好きで、収穫したものをお店のメニューとして提供することもあるとか。反対に、料理長さんは一度もここに来たことがないらしい。よく考えれば当然だけど、全員が海で食べ物が採れることに対して価値を見出しているわけではないそう。特に若者は、全く採りに行かないらしい。僕が石垣に住んでいたら、喜んで採りに行くと思うのに…

    多宇さんと、多宇さんの同僚でよく一緒にモズク採りをするという佐藤さんと合流し、モズクが採れるポイントへ。モズクが採れる海岸は決まっているが、中でも良く採れる場所はその年によって変化するらしく、多宇さんは毎年モズク採りを始める前にポイントをチェックしているらしい。
    服装は、濡れてもよいジャージに、海水パンツと海用サンダル。多宇さんからモズク採りに必要な網袋(洗濯ネットのようなもの)を受け取り、準備万端。多宇さんは網袋とは別にタモを、佐藤さんはボウルと水切りを持っている。

    はじめに、モズク採りに挑戦。

    ポイントの海岸に出ると、浜辺には既に種々の海藻が大量に流れ着いている。日差しは強くなかったが、海水の温度が暖かくて気持ちいい。
    佐藤さんは連勤が続いた後、海に入るだけで疲れが取れるらしい。その気持ちが、少しわかった気がした。

    ここで、モズク採りのポイントを紹介しよう。


    【その1】モズクを探して浅瀬から遠浅を歩き回る。モズクは密集して生えていることが多いので、そこを見つけて採るのがよい。

    【その2】潮の流れに逆らって歩き、採ること。歩くことで舞う砂が潮で後方に流れてしまうので、モズクに砂が絡みにくくなる。

    【その3】カイワレダイコンみたいな海藻と一緒に生えていることが多く、モズクと絡んでしまうので、採るときに取り除くこと。

    【その4】服が濡れることは気にせず、がばっと手を伸ばすこと。

    最初こそモズクを採りながら3人で会話していたが、だんだんと無言になってくるのが可笑しかった。「無になって作業できるのがいい」と佐藤さんは話していた。なるほど、精神的には座禅に近いのかもしれない。そして、モズク採りは、採るたびに得をする草取りのようだと感じた。

    1時間ほど経って浜に上がり、収穫量をくらべることに。佐藤さんは僕の倍、多宇さんは三倍採っていた。大漁だ。多宇さんは、もう少し採っていたいようなそぶりを見せていた。なんとも愛らしい姿である。

    続いて、アーサ採りに挑戦。

    モズクに続いて、汁物や天ぷらにすると美味しいアーサを採ることに。アーサはモズクと違って波際の岩場に多く生えている。

    ここでは、アーサ採りのポイントを紹介しよう。


    【その1】岩場に生える海藻はアーサ以外に、ごわごわとした繊維みたいなものと、ワカメのような固めのものがある。その2種は食べても美味しくないので避けたほうがいい。アーサは最も滑らかな手触りなので、注意が必要だ。

    【その2】アーサの大敵は砂。アーサには砂が絡みやすく、取り除くのが大変。ポイントは、なるべく根より上の部分だけ採ること。その場で砂をある程度取り除けるとグッドだ。佐藤さんのボウルは、ここで活躍するのだ!

    収穫終了。そして、調理開始。

    30分くらいで袋がパンパンになり、アーサ採りが終了した。海水をたっぷり含んだモズクとアーサの重みが、なんだかとても嬉しかった。自分たちで自分たちの食べるものを採ってくるという行為が、こんなに気持ちのいいことだと感じたことはなかった。改めて、そんな行為が出来る環境が残る石垣島に感謝したい。

    採ったモズクとアーサは、多宇さんらの仕事場であるホテルの調理場で後処理と調理をしてもらうことに。モズクだけでなく、アーサの処理も一緒に行ったが、思っていたよりずっと大変で、何度も何度も洗い流し、細かい砂を取らなければいけない。美味しいアーサを食べる裏にはこんな苦労があるのか、と身をもって感じた。

    モズクはサッと湯通しし、麺つゆに浸けていただくのが一番美味しい食べ方らしい。湯通ししたモズクは鮮やかな緑色なり、とろみが強くプチプチとした歯ごたえがある。こんな食べ方、はじめてだった。

    食後に今回のお礼をして解散し、この日のプランは終了。最終日となる5日目に期待を膨らませながら、石垣最後の夜を過ごした。

    DAY05

    島の暮らしと、文化に触れて。

    多彩な顔を持つ島民へ会いに行く。

    最終日は、朝から川平湾の近くでB&B(ベッド&ブレクファストという、宿泊施設の形態の1つ)とカフェを営む蓼沼(たでぬま)さんの元へ。
    蓼沼さんはお店を営みながらも、近くに農地を買って数十羽の鶏を育てる養鶏農家さんでもある。元々東北の出身で、とにかく雪が嫌いで数年前に石垣に移り住んだという。
    2000坪の農地を購入して、自分で一から養鶏を始めたと聞き、実際に見せてもらうことになった。

    場所に近づくと、鶏の元気な声が聞こえてくる。鶏は立派な小屋と広い遊び場がついた飼育スペースの中で走り回っている。鶏に餌をやるため、敷地の草取りをする蓼沼さん。聞くとそこらかしこに生えている、『センダングサ』というハーブで育てているのだとか。良質なハーブが食事…ここの鶏はなんていい生活を送っているんだろう。そのせいか皆、丸々と太っている。これが、元気で新鮮な卵を産んでくれる秘訣なんだろう。

    収穫した卵はそのまま、市街地の『ゆらてぃく市場』へ出荷するほか、自身のカフェで販売している自家製プリンにも使用されている。このプリンが卵本来の味はそのまま、ナチュラルでとても美味しい。今後はプリンも商品として売り出したいと話してくれた。

    このほかにも、敷地内ではドラゴンフルーツやバナナ、アセロラといったフルーツも栽培していて、緑で溢れている。鶏の元気な声を聞きながら散歩していると、不思議とリラックスするのだ。蓼沼さんも「お店がなければずっとここに居たい」と本音をこぼすくらい、魅力的な場所なんだと思う。

    また、敷地にはまだまだ岩場や雑木林があったりと、開拓できる場所がたくさんある。「将来はツリーハウスを作ったり、キャンプ場を併設したい」と話す蓼沼さん。そんな風に自分でプラン考えて、理想の空間を作っていくのは、とても素敵だと思う。

    しんみりしない、お墓参り。

    午後はUSIO事務局の方のご家族と一緒に、お墓参りへ。実は今日は『十六日祭』という、家族でお墓参りをするお盆のような日。しかし、僕らのイメージするお墓参りとは全く違って、お墓の前のスペースで重箱を広げ食事したり三線を弾いたり、家族で楽しく過ごすのがこの『十六日祭』だという。多分、ご先祖様との距離感みたいなものが近いのだろう。亡くなった後も、一緒に宴をするというのはなんだか素敵な風習だ。

    今日は皆、お仕事や学校もお昼で終わり、午後からお墓へ行っているため、道は車でいっぱい。お墓に人が集まっている風景は初めてだったので、なんだかドキドキした。
    沖縄のお墓は一つひとつがとても大きく、墓石の前に人が集まることができるスペースがあるのが特徴だ。そして、どのお墓もよく手入れされており、ジメジメとした雰囲気が全くない。日差しが差してくると、まるでピクニックに来ている感じだった。

    旅の終わりに。

    この旅では、名人の皆さんとの交流を通して、たくさんの自然に触れ、特有の文化や風習を学ぶことができた。石垣は見るもの聞くもの全てが新しく、思わず惹かれてしまう要素がたくさんちりばめられている。ここで生きる全ての人が、僕にとっては『名人』だった。
    突然声をかけたのに、本当にいろんなことを教えていただいて心より感謝したい。そして、石垣を離れるとき、また絶対来ようと心に誓った。名人と出会う旅は、これからもきっと続いていくだろう…

    石川さんが見つけた石垣島

    いちばん美味しかったものは何ですか?

    正直すべて美味しかったのですが、やはりモズクそーめんが一番感動しました。

    いちばんの絶景ポイントはどこですか?

    阿香園の前を走る海沿いの道路。川平と市街地を何度も往復しましたが、開けているので遠くまで見渡すことが出来て、車で走っていてとても気持ち良かったです。

    お土産、何を買いました?

    島バナナと武田珈琲さんのコーヒー豆を買いました。