09
畑のチョコレート「沖夢紫」で作ったお菓子
紅芋パイ
紅芋パイ

畑のチョコレート 沖夢紫を使った紅芋パイ

島の家庭に昔から伝わる「ウムニー(芋煮)」をパイで包んだお菓子。芳醇な甘さとモチモチとした食感の秘密は、「畑のチョコレート」とも呼ばれる希少な紅芋「沖夢紫」。

芋不足に悩まされるほど人気のお菓子なので、パッケージもリアルな紅芋型にしてみました。トースターで数分温めて食べると、パイの食感と芋の甘みをさらにお楽しみいただけます。

生産者:八重山南風堂 × デザイナー:慶本俊輔
販売場所:石垣島島内 各お土産店にて販売予定


このお土産のストーリーを読む

num1
328IMG_3598_00104

懐かしの島の味をパイ生地に包んで

台所でコトコトと鳴る鍋のふたからふんわり漂う甘い香り・・・。畑仕事や学校から帰ると、おばあちゃんやお母さんがこしらえてくれていた「ウムニー(芋煮)」。紅芋を煮てペースト状にすりつぶし、砂糖を加えた簡単なお菓子です。沖縄ではその昔、ケーキやクッキーなどのお菓子がない時代、この甘いウムニーをおやつ替わりにしていました。懐かしい島の家庭の味・ウムニーは、沖縄スイーツの元祖とも言われています。

それをパイ生地に包んだ八重山南風堂の「紅芋パイ」は、観光客にも大人気のお土産。これに使われている紅芋は、「夢の品種」とも言われ注目を集める「沖夢紫(おきゆめむらさき)」。その芳醇な甘さとモチモチとした食感に一口で虜になってしまう人も多いとか。紅芋らしからぬ糖度の高さから、関係者の間では「畑のチョコレート」とも称されています。

この味ができるまでの道のりには、島を想う人たちが作り上げた「自然に優しい」商品づくりのサイクルがありました。


生産者から製造業者までがタッグを組んで

「本当は僕、紅芋のこと好きじゃなかったんですよ。でもこれを食べるとスーッと喉越しが良く甘かった。そこで初めて芋って美味しいんだと思ったんです」と笑顔で話すのは、「石垣島薬草研究会」の運道和直さん。農家さんが収穫した沖夢紫を買い取り、ペーストにする一次加工を行っています。

これを買い上げ紅芋パイとして二次加工し、製品化までを担うのが菓子製造業者の「八重山南風堂」。地元の特産品として、「島内で完結する生産・加工・製品化の仕組み」が確立されています。

そもそもこの流れができたのは、運道さんと琉球大学名誉教授・大屋一弘さんとの出会いから。大屋さんは平成11年に定年で退官後、石垣島内の畑で農業を始めます。そのころ誕生した品種が「沖夢紫」。台風に強い作物をと考えていた大屋さんにぴったりの作物でした。

num2
312IMG_3573_00079

309IMG_3569_00075

「ただ、出荷先が不安定なため、農家にとっては安心して作り続けることができない・・・」。

大屋さんに話を持ち掛けられた運道さんは、生産と加工に着手し、その後のルート作りにも奔走。商品化は地元に製造所を持つ会社に是非ともお願いしたいと、沖縄本島の「南風堂」へ打診に行きます。

運道さんらの熱い想いに応え、地元での商品化が決定します。平成23年、南風堂で一番歴史の長い「パイ」の新作として、この沖夢紫を使ったパイの販売が開始。
こうして、懐かしくも新しい石垣名物「紅芋パイ」が誕生したのでした。


num3
284IMG_3539_00045

島全体が幸せになる農法で

現在、42人の農家が栽培する沖夢紫。サトウキビとの交互の栽培「輪作」をおこなっています。

同じ作物を同じ畑で続けて栽培すると起こる「連作障害」を防ぐため、サトウキビの栽培が終わると半年間は休息期間に。ところが、沖夢紫はサトウキビとは必要な養分が違うためその障害を防ぎ、さらに季節を問わず植えられ半年で収穫できるため、この間の農家さんの副収入に。そのうえ沖夢紫を植えることで病害虫を防ぐ効果が上がるなど、サトウキビにはうってつけの畑を作ってくれるのです。

DSCN9138

さらには、サンゴ礁を守るという利点も。
ただ休ませている状態の畑が引き起こすのが、土壌流出。地下茎などの防壁をなくした土は、雨が降るとどんどん海へと流れ、サンゴ礁に悪影響を及ぼす畑の赤土流出を引き起こしてしまいます。そこに芋を植えることで根が張られ、それを食い止めてくれるといいます。

植えることで環境保全に役立ち、良い畑を作り、農家さんの副収入や島の新たな雇用も生まれる・・・。
一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなり、島に優しい循環を創り出すミラクルな作物、それが沖夢紫なのです。


常に足りない原料に奔走しながら

沖夢紫はとっても鮮やかな紫色。そのヒミツは、一般の紅芋よりもアントシアニンが豊富だから。目によいとされるアントシアニンには強力な抗酸化作用があり、血圧降下作用、肝機能改善などさまざまな効果があると報告されています。

そんな沖夢紫のパイの人気のヒミツは、その上品で素朴な甘みから。お土産に買って帰ったお客さんから「美味しかったから直接送ってもらえませんか?」という要望に応えることもしばしば。大手百貨店からの商談や県外からのオファーも絶えないけれど、原料不足で応じられていないのが現状なのです。

num4
325IMG_3594_00100

342IMG_3617_00123

生産者から受け取った沖夢紫をペースト加工して次のパイ工場に託す運道さん、「八重山南風堂さんからは毎日のように『材料まだ?』って電話がくるよ。世の中が進化して携帯の世の中になってしまったせいで逃げられなくて。海外に1カ月くらい行ってこようかな」と笑います。そう言いながら八重山南風堂の担当者・五島信幸さんに「待ってもらって感謝してます」と頭を下げ、「生産者に支えられて我々があるんです」ときっぱり。

そこには紅芋パイを取り巻く人たちの温かい絆がありました。


num5

おいしさのワケは「愛情が詰まっているから」

五島さんいわく、紅芋パイのオススメの食べ方は、オーブントースターで数分温めること。
「クロワッサンと同じで、焼くとサクサクっとした食感になり、工場出荷時の一番おいしい状態を自宅で手軽に再現できますよ」。

DSC_4166

なるほど、こんがり焼き色が付くぐらいに温めた紅芋パイの香ばしいこと。
バターの風味がふわっと香り、サクサクとしたパイ生地と柔らかい甘みの紅芋ペーストが口の中に広がると、自然と笑みがこぼれます。

なぜだか懐かしい島時間を感じてしまう紅芋パイ。
できたて風味をお届けできるご当地スイーツとして、最適なお土産です。


石垣島が好きで移住したという五島さん。この紅芋パイについて、「美しいこの島で作っている商品だということそのものが、付加価値だと思っています。 この商品を通して裾野が広がり、地元にいろいろなところで還元していくものになればと思います」と、これからの島への波及効果に期待します。

一方、石垣島で生まれ育った運道さん。「この紅芋パイを通して、石垣の人の温かさが伝われば」
———そう力強く答えてくれました。

紅芋パイは、島を想う人たちが連携して商品化へと導いた、まさに絆の賜物。
「僕の体重よりも重い価値があるものなんですよ」と茶目っ気たっぷりの運道さん。おいしさのワケは、「一番は愛情じゃないですかね?」とポンポンと胸に手を当てます。

石垣島を心から愛する人たちがつながり、島に優しい循環を築く中で生まれた紅芋パイ。口いっぱいに広がる優しい甘さがその想いを伝え、口にする人をほっこりとした気持ちにしてくれます。

296IMG_3552_00058